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日々是肉球

みどりさん

先週、みどりさんとお別れをした。
元旦の交差点で短い挨拶を交わした次に
まさかこんな形で会うことになるとは思わなかった。

みどりさんが退院して、エフに来る機会があると聞いたとき、
またこれからエフで普通に会えるんだな、と思った。
あの夜、ほんの何百mか先に居たのに。
また今度、は二度と来ないんだと悔やんだ。

あんなに可愛らしい人はいなかった。
エフの前を通りかかると、ガラスの向こうでにこにこ笑って手を振ってくれた。
旦那様のギターの練習がうるさいとか、毒虫に刺されたと思っていたら帯状疱疹だったとか、
すっとんきょうなことも多かったけれど、どんなことも目をきらきらさせて話す。
年に一度の蔵の大掃除をきっと誰よりも楽しみにしていて、大はりきりの末に翌日寝込んでしまったり、三社祭もはっぴを作って大はりきりの末に翌日やっぱり寝込んでしまったり
あんなに魂がいきいき輝いているので
会った後は、いつも自然と明るい優しい気持ちになった。
彼女に会って厭な思いをしたことなんて一度もない。
みどりさんの笑顔以外を知らない。

棺の中、花に囲まれたみどりさんはそれは美しく
白雪姫みたいだった。
少し開いた口元が微笑んでいるようで
今にも起き上がっていつもの可愛らしい目がくるくる動き出しそうだった。

葬儀の教会は、みどりさんを慕うやさしい想いに溢れていた。
みんな彼女が大好きだった。

旦那様のみどりさんを想う気持ちにも打たれた。
40年間、あんなに愛されるとはどんなに深いことだろう。
数々の辛いこと苦しいことを昇華してしまう
人が人を思い遣る心とは
どんなに強いものだろう。

何度も思う。
また今度、は来ないんだと。
今、この時大切なものに触れておかないと、きっとまた次、はやって来ない。
やって来ることが奇跡なのだと。
明日元気な顔で家族や友人におはよう、ということも奇跡なのだ。
当然のことでは決してない。

むにのおばあちゃんが先々月亡くなった時もそう教えられた。
別れは人と人との繋がりを改めて示してくれる。
私たちの生命はこんなに多くの人と繋がって初めて生かされているのだと。

昔祖母が言っていた。
葬儀で家族や親戚、友人を一同に会させるのは
亡くなった人の最期の仕事、贈り物なのだと。
その人を一点に、私たちは繋がり合っている。

この世ではもう会えないけれど、次の世界でお会いすることを願って。
みどりさん、また今度。
そう言って、冷たい頬を撫でた。
本当にありがとうございました。
旦那様とはこれからもごはんを食べたりコーヒーを飲んだり
繋がっていきますので、どうぞ安心してください。

魂が慰められるような気がして、みどりさんのことと空を想いながら聴いています。
Pabro Casals
エルガー/チェロ協奏曲 ホ短調作品85
ブルッフ/コル・ニドライ 作品47

kiii



by yun-ron | 2010-11-22 16:37 | 浅草

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